iPad アプリはユーザーがどんな持ち方をしても使えるように、可能な限り縦横に対応することが推奨されています。ふつう、画面をユーザーから見て常に正位置に保つことでそれを実現します。
しかし Inkiness for iPad では、ただ画面を回転するだけでは済みませんでした。Inkiness は現実のノートを “使用感まで含めて” 模した手書きアプリだからです。
現実のノートやスケッチブックは色んな向きに持って書くことができます。縦向きでメモを取りたいときでも、横向きで紙いっぱいの図を書きたいときでも、好きなように持ち替えれば済みます。また、例えば表組のような縦と横の線を引くとき、ノートを90度回してすべての線を横に引いたことはありませんか?あるいはスケッチなどでは、ひとつの絵を色々な角度で描いたりします。
物にはこういった自由さがあります。Inkiness はページを開いたメモ帳を模して、好きなように使えることを目指したアプリです。画面や描画した線を常に正位置に回転していては、「縦長でも横長でも使える」手軽さや「好きな角度で持って線を描く」自由さがなくなってしまいます。しかし一方で、iPad アプリとして縦横にきちんと対応して、起動したときに向きを気にせず使えるべきだとも考えました。
そこで Inkiness for iPad では、特殊な画面回転を採用しています。デバイス自体を一冊のノートに見立てた画面は一定に固定して、アイコンやポップオーバーなどの要素だけをユーザーの向きに合わせます。また、描画に使うツールは手が届きやすくて誤タッチしづらい下部中央に来るようにしました。さらに、どの向きで書いたかをノートごとに保持することで、サムネイルで一覧したときに内容を把握しやすくしています。
ノートそのものは iPad に固定して、まっすぐになっているべきコントロールや情報だけを回転させることで、Inkiness の特徴であるノート本来の使用感を持たせつつ、縦横に対応することができました。