こんにちは。営業部の大谷です。
IT 業界では毎年新たなバズワードが生まれては消えていきますが、今年最も聞かれた言葉の一つは「AI」「人工知能」ではないでしょうか?
人工知能というと最近のニュースでは毎日のように新たなすごいものが出てきていますが、本日の Fenrir Advent Calendar 2016 10 日目の記事では「2016 年にグッときた人工知能関連ニュース」をお送りします。若干 2015 年のも含まれていますがご容赦ください…
Google フォトの画像検索がすごい
無料でスマホの画像がクラウドに溜め込みまくれるサービス「Google フォト」。無料で容量無制限というのが話題になりましたが、ここに搭載されている画像検索機能がすごいです。
例えば「空」で検索すると…
こんな感じで出てきます。
これ、自分のアップした写真の中を検索しているんですよ? Google 画像検索をしているんじゃなくて。
裏側で AI が画像認識をしているというらしいのですが、かなり偏ったワードでも出てきてくれます。
例えば「結婚式」で検索しても出てくるし…
「帽子」なんかでもちゃんと認識してくれて、きちんと帽子が写った写真のみが表示されています。
画像認識系は AI の進化の中で、ここ一年最も驚かされた分野の一つです。
レンブラントの幻の新作と Prisma
上記の画像認識からもう一歩踏み込んで、AI がアートの分野で革命を起こしそうな可能性を秘めたニュースがたくさんありました。
その一つが、1600 年代の画家・レンブラントの画風を AI が学習し、新作を発表したというもの。
「レンブラントが描いた全 346 作品を 3D スキャンし、高解像度化した画像データを用意。ピクセル単位で画像を分析し、ディープラーニングのアルゴリズムを用いて、絵画の主題や構図、服装の特徴、性別・年齢などを学習した。顔認識アルゴリズムを活用し、目や鼻といった顔立ちのバランスも考察している。」とのこと。さらにこれらを 3D プリンタにて実際に絵の具で描いたような絵画に仕上げています。
人工知能が描くレンブラントの“新作”絵画 機械学習・3Dプリンタを活用 – ITmedia ニュース
また、これよりもっと身近に使えるものとして、Prisma というアプリがあります。
こちらは画像をフィルタで加工するアプリで、葛飾北斎風にしてくれたりムンクの叫び風にしてくれたりします。
このアプリのすごいところは、その加工精度の高さ。これまでの画像加工アプリですと、なかなか大雑把なフィルタになってしまい「それっぽいんだけど使い物にならない」作品しかできませんでした。しかし、Prisma なら十分に鑑賞に耐えうる、印象的な作品に仕上げてくれます。このアプリでは、裏で AI が働いていて、これまでに処理できなかった高速な加工を実現しているようです。
ただのフィルターアプリとは格が違う。AIとニューラルネットワークを使った画像加工アプリ「Prisma」|ギズモード・ジャパン
こちらのリンク先が非常に分かりやすく、きちんと人物と背景でフィルタの粗さが分かれていて、きれいな加工になっているのが見て取れます。
人工知能クリエイティブ・ディレクター「AI-CD β」
クリエイティブというところでいうと、マッキャンエリクソンに AI のクリエイティブ・ディレクターを「入社」したというニュースがありました。
マッキャンエリクソンに世界初*の人工知能のクリエイティブディレクター入社 – 株式会社マッキャン・ワールドグループ ホールディングスのプレスリリース
AIがテレビCMを企画、その実力は? | HRナビ by リクルート
こちらの記事では CM のプランニングについて書かれていますが、AI ならではの「定石外の発想」が大変興味深いところです。事例にあるお菓子メーカーの CM では、『「夫婦愛」を、「民話パロディ」をつかって、「シュール」に、「想定外」を印象付けて、「ほろり」とさせろ。』とのこと。たしかに「民話パロディ」の CM とかってアレとかアレかなぁ…ときちんと学習できている感があるものの、「シュールに」というところが新しさを感じます。
普通、AI が考えたものってどこか人間の発想力には敵わないんじゃないかって思っちゃいますよね。しかし、AI だからこそ先入観やバイアスに囚われない本質を突いた発想ができる可能性があるようです。
この「AI だからこその発想」というものはかなり未来がありそうで、既に将棋界では AI が生み出した定石外の一手をプロ棋士が学習する、という流れが一般的に認知されています。
大喜利ができる人工知能「大喜利 β」
大喜利ができる人工知能というものも話題になりました。「株式会社わたしは」の「大喜利 β」というもので、テキストか画像でお題を投稿すると、それに合った大喜利を返してくれるというものです。
吉本の芸人とイベントで大喜利対決したり、テレビにも出たようですが、まずはこちらの記事がめちゃくちゃおもしろかったのでぜひご一読ください。
【世界初】大喜利ができる人工知能の開発者に会ってきた | オモコロ
最近はフリースタイルラップまでやり始めたらしいです。「これはベッキー可哀想 あの LINE とかの内容」とか、ちゃんと韻も踏んでいて大変にドープです。
【中の人】
大喜利フリースタイルラップAIの試作機
人工知能が生成したリリックの一部です。“テレビ観ててもその話題 男だと考えた場合
これはベッキー可哀想 あのLINEとかの内容
ファンなのかな元々 これはやり過ぎなところ
友達であることは間違い 恋人ごっこしようよみたい”— 大喜利β (@ogiribeta) 2016年12月7日
東ロボくんが東大を諦めた
国立情報学研究所が中心となっているプロジェクトで、AI が東大入試に合格できるか、という研究をした「東ロボくん」というものがあります。それが、11 月に「諦めた」とのこと。
なんで諦めたことがグッときたかというと、そこに至る過程がとても示唆的だったからです。
「東ロボくん」が偏差値57で東大受験を諦めた理由|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン
東ロボくんは数学や社会であればとても良い成績を取れるらしいのですが、国語が苦手とのこと。それは文章の意味を理解できないからのようです。
実際の問題文ではないが、「A.彼は報告書をまた出し忘れた」「B.おまけに会議に遅刻した」という文章のあとに、続く文として以下3つの選択肢があるとしよう。
(1)私は寝坊した。
(2)会議には報告書が必要だ。
(3)彼は社会人として自覚がない。東ロボくんは、A、Bと同じ単語が入っている(2)や、遅刻という単語と同じ文章に入っている確率が高い「寝坊」が含まれる(1)を選んでしまう。文脈を理解できず、自分のデータにある単語の組み合わせの頻度から推定して答えてしまうためだ。
こんな簡単なことが東大入試の数学より難しいなんて!
この記事を読んだ時、「中国語の部屋」という 1980 年から言われるコンピュータのアナロジーを思い出しました。
チューリングテストで知性の有無を判断するというチューリングの説に対して哲学者ジョン・サールが持ち出した反論。ある部屋に中国語が分からない人が一人いる。部屋の外から中国語で書かれた文章を渡されると、部屋にある英語で書かれた膨大なマニュアルを調べてその文章に対する適切な答えが中国語で書かれたカードを選び、外に出す。チューリングの定義によるとこの人は中国語が分かることになるがそれはおかしい、という議論。
しかしこの部屋全体が中国語を理解していると考えることも出来る。我々は自分に意識があることを分かっているが、他人にも意識があるかどうかは質問して調べるしかない。意識がある人間と全く同じ答えを返す機械があったとしたら、その機械以外の人間にとっては機械に意識があると考えるしかない。
コンピュータが人間の心を持てるか、というのは古くからのテーマですが、AI が相当賢くなった今ですら、やはりその壁はかなり高いように感じました。
しかし、その逆でこんなおもしろいニュースもありました。
「教えて!goo」 恋愛相談カテゴリーへのAI導入開始のお知らせ | gooプレスリリース
たしかに、恋愛相談って相談することが重要で、答えは割と決まりきっているので AI で代替可能そうですよね(笑)
こちらも「中国語の部屋」的な話ではありますが。他にもカウンセラーとか出会い系ビジネスのサクラとか、色々なものが AI に代替されそうな気がしています。
以上、「2016 年にグッときた人工知能関連ニュース」いかがでしたでしょうか?
どのニュースも、自分が子供の頃に夢見た SF の世界の出来事ばかりで、テクノロジーはすごいスピードで進化しているんだなとグッときます。
最後に宣伝となりますが、フェンリルでは最近人工知能関係にも力を入れており、アプリやウェブに AI を絡めたサービスのご相談もお受けしています。ご興味があれば、お気軽にご相談ください!
フェンリルのオフィシャル Twitter アカウントでは、フェンリルプロダクトの最新情報などをつぶやいています。よろしければフォローしてください!
フェンリルの Facebook ページでは、最新トピックをお知らせしています。よろしければいいね!してください!