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人はなぜミルクシェイクを買うのか?

 

こんにちは。
ユーザー調査などを担当しているナガホリです。

ここ数年、「イノベーション」や「共創」という言葉をよく見かけるようになったように感じています。
モノが溢れる時代にどのように革新的なサービスや製品を生み出すかは、非常に興味を惹かれるテーマではないでしょうか。

題名に書いたミルクシェイクのジレンマで有名なイノベーションに関する「ジョブ理論」という本について、調査の視点で少しご紹介できればと思います。

 

ジョブ理論?

題名に書いたミルクシェイクの話は、90年代のデトロイトでの事例として出てきます。

要約すると、

ミルクシェイクの売り上げを上げるために、値段や味などについて顧客に質問し、それらの回答を元に改善をおこなっていたが売り上げに変化が起きなかった。そこで顧客のどんな用事や仕事(それを「ジョブ」と言っています)が、顧客を店に向かわせ、購入に至るのかという切り口で調査したところ、早朝に来店していた顧客は仕事先までの長く退屈な運転中に時間をかけて小腹を満たすにはちょうど良いからということがわかった。バナナでもドーナツでもベーグルでもなく。また、夕方には子供に良い父親だと思われたいという理由で売れていることがわかった。

というお話です。

顧客は「ジョブ」を片付けるために、プロダクトやサービスを雇用します。整理すると、

ジョブ1:仕事先までの長く退屈な運転中に小腹を満たす
ジョブ2:良い父親だと思われたい
雇用した製品:ミルクシェイク

となります。

この事例からは、顧客がプロダクトやサービスを生活の中に引き入れる理由を理解することが重要だということがわかります。
ある特定の状況で顧客が成し遂げようとしている進歩を、機能的、社会的、感情的側面も含めて理解が必要です。
利用状況が異なれば、同じ顧客でもジョブが異なってきます。

 

競合は?

ジョブ理論のレンズを通すと、市場で同じカテゴリにくくられているプロダクトだけに競争相手が限定されることはほとんどないです。
本の中には、NetflixやBMWなどの事例が出てきます。
”Netflixは、リラックスのためにすることなら、なんでも競争相手になる。BMWはモビリティという視点で見ると、テスラやウーバーなどとも競っている。”とあります。

競合について調査する際は、ジョブという視点を通して範囲を広げて判断できていないと、真の競合に気づかず検討が進んでしまう要因になるので、気をつけたいです。

 

ジョブハンティング!

”ジョブを理解するには、どの技法を使うかではなく、どういう質問をするのか、そして答えとして得られた情報をどうつなぎ合わせるかが重要。
ペルソナ分析、フォーカスグループ調査、パネル調査、競合分析なども、すべて重要なインサイトを見い出すための有効な出発点になり、
また、誰かが間に合わせの策や代替行動をとっていたらその行動が新しい手がかりになる。顧客がプロダクトをどのように利用しているかを詳しく調べると、重要な知見を得られる。”
とあります。

ユーザーの利用状況を調査する際の設計や分析時の視点として常に意識したい点です。
ユーザーがどのように感じ、行動しているかに共感できるかが重要です。

 

 

顧客が言わないことを聞き取る

”顧客が自分の要求を正確に漏れなく表明できることはめったにない。
行動の動機は本人が言うよりも複雑。本質をつかむには、注意深く観察し、丁寧なやりとり重ねる必要がある。
「初心者の心構え」で望むことが肝要である。
それができないと誤った思い込みやバイアスで重要な情報を弾いてしまう危険性が増します。”
と顧客について正しく理解するための教えが出てきます。

ヒトは発言と行動が異なる場合が多いので、ユーザー調査の際にも行動や発話の裏に何があるのかに着目して理由や状況について深掘りしていくことが重要だと常日頃から注意しておきたいです。
発話をそのまま鵜呑みにしてしまうと、ミルクシェイクの例のように実際には使用されないということになりかねません。

 

ジョブを解読する

”以下のような視点で把握して対策を考える必要がある。
・顧客が求める進歩と受け入れるトレードオフは何か
・打ち負かすべき競合はどこか
・乗り越えるべき障害物を明らかにするために、機能的・感情的、社会的側面から理解する
そうすることで、商品を購入および使用してもらうための適切な体験を構築する計画を立てることができ、
そのように生み出される体験は、顧客が何度も繰り返し雇用したくなる解決策を創造する上できわめて重要。”
とあります。

きちんとユーザーと状況を理解した上で、ユーザーの課題をどのように解決策し、どのような体験を提供できるかを検討することの重要性が記載されています。

 

さいごに

上記の内容は調査に関わる部分を中心にご紹介させていただきましたが、顧客中心の組織を作り上げる、顧客の印象に残るブランドを作る、などについての記載もあります。
また、本書に記載されていることは、デザイン思考やUXデザインプロセスとも通じる部分がありますので、ご興味を持った方は是非読んでみてください。

ユーザインタビュー調査やユーザビリティテストなどでは、なぜそう思うのか、なぜそのように行動したのかを深掘りして行き、被験者の方が気づいていない潜在的なニーズを洗い出すことが重要です。
バイアスを取り除き、正しい問いを立て、課題解決するための新たな施策をたてていきます。

これからも、多くの人が便利で快適な生活を送れるようなアプリやサービスを提供すべく、ユーザーの「ジョブ」に注目していきたいと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

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